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「悪の枢軸」を語る「戦争屋」ーーアメリカ世界帝国主義論と「米帝」中東・朝鮮戦争の脅威
■1.「悪の枢軸」発言ーー対イラク先制攻撃言明
田 中外相更迭(29日)に隠れてしまったため、同じ日に行われたブッシュ大統領の一般教書演説(資料1)はさほど日本のマスコミに報道されなかった。しか し、これは、外相更迭事件と同様に信じがたいものであり、日米双方の政権の低劣さと危険性をこの二つの事件以上に明確に語るものはない。
この演説の問題点は、次の3つであろう。
1.イラクに加えて、北朝鮮とイランとを「悪の枢軸(Axis of Evil)」と呼んだこと。
2.対テロの論理を用いながら、「大量破壊兵器」所持国への戦争を示唆し、実質的には、戦争の論理を変更・拡大したこと。
3.自衛戦争という名目を捨て、事実上の先制攻撃の可能性を示唆したこと。
これは、ブッシュ大統領個人の思い付きではなく、その後にライス・ラムズフェルトら政権首脳がそれを敷衍する発言を行い、大統領は「対アフガニスタン戦が 成功したからといって、本気ではないと思っている人達が世界にはいるが、我々に躊躇いはない」として、「各国も我々の側につく必要がある」と同調を要請し た(資料3)。さらに、穏健派のパウエル国務長官までが、大統領の強い指示に従って強硬姿勢に転じ、下院外交委員会で、フセイン政権打倒を「米国だけで行 わなければならない」「考えうる最も深刻な行動もありうる」と述べた(8日、資料11)。
従って、イラク等の攻撃は既に政権全体の意思と見做さなければならず、副大統領の中東歴訪はイラク単独攻撃への布石と見られている(資料9)。アフガニス タン攻撃の際に、政権内部で強硬派は当初から大量報復攻撃としてイラクも同時に攻撃することを主張し、パウエルら慎重派の抵抗で、その実施を先延ばしにす ることとした。いよいよその時期が到来し、正に大量報復攻撃を開始しようとしているわけである。今回は、ロシア・中国などが批判しているのみならず、フラ ンス(ベドリヌ外相、ジョスパン首相)やイギリスのような欧州の友好国までもが批判的なので、アメリカ一国で攻撃に出るという信じがたい凶暴な姿勢を見せ ており、この姿勢は現在でも変わらない(資料17)。
■2.「文明の対話」を破壊する戦争国家ーー邪悪なのはどちら?
思想的に見て驚倒したのは、イラク・北朝鮮だけではなく、イランまでも「悪の枢軸」に入れたことである。同時多発テロ事件やアフガニスタン戦線について、 イランは比較的アメリカに好意的な姿勢を取っており、突然攻撃対象になる現実的理由は見当たらない。パレスチナへの武器輸出事件への関与を疑っているけれ ども、それだけで攻撃対象になるとは思えない(1)。タリバーン政権の場合は、その原理主義的な時代錯誤の硬直的思想の故に、思想的には擁護できなかった が、イランの穏健派・ハタミ政権の場合は、全く事情が異なる。
ハタミ大統領の著書『文明の対話』(共同通信社、2001年) は、思想的にも相当評価できる良質の著作であり、むしろこのような角度からこそ、「文明の衝突」の危機を避け、文明間の平和共存が可能になると思わせるも のであった。ある意味では、イスラーム圏の現状の中で、ハタミ大統領は、いわば「哲人大統領」のような存在であり、「文明の衝突」を回避するための希望の 星であった。イラン内部では、なお強硬な保守主義的勢力も強いとはいえ、ホメイニ師がイラン革命を起こした国で、このような優れた思想を大統領が述べるこ との意味は決して小さくはない。さらに、現実の外交にも、同時多発テロ事件後にその改革派路線は明確に反映していたのである。
イランは「文明の対話」を提唱していた。それを「悪」と呼ぶ国家は、すなわち「文明の対話」を破壊する戦争国家である。どちらが、「邪悪な国家」だろうか?
■3.「文明の衝突」をもたらす「悪の帝国の戦争屋」
テロとの直接的関係もないのに、イラクを攻撃し、さらに反テロ戦争に比較的協力的だったイランまでも「悪」と規定して、果たしてイスラーム諸国ないしムス リムはアメリカを支持し続けることができるであろうか? これでは、「テロ組織」どころか、原理主義ですらなくとも、アメリカの攻撃の対象になり得ること になる。穏健派のイスラーム国家ですら、アメリカの随従し続けない限り、先制攻撃を受ける危険が存在することになってしまう。過激派ならずとも、正統的な ムスリムから見てさえ、これはアメリカの暴虐な支配であり、「防衛的ジハード」の対象にならないであろうか?
「文明の対話」を提案して国連のプロジェクトにまでした国家を攻撃するようでは、「文明の衝突」を自ら引き起こそうとするかのうようである。敵対していた イランとイラクとを共に「悪の枢軸」と規定することは、逆にこの二国の間の提携、ないしイランと他のラーム諸国との提携をもたらすかもしれない。シーア派 のイランとスンニ派のイスラーム諸国が提携することの意味は決して小さくはない。イスラーム内部の思想的対立が乗り越えられて、イスラームとしての連帯感 が現在以上に生まれてくるかもしれないからである。
これまでは、イランーイラク(まして北朝鮮)の外交的提携ないし「枢軸」などは、存在しなかった。しかし、この愚かなアメリカの規定により、そのような 「枢軸」が生まれてきたら、どうするのだろうか? イスラーム陣営の結集という可能性が生まれてくる。これは、ハンチントンの「文明の衝突」のシナリオ通 りなのである。アフガニスタン戦線は、幸い「文明の衝突」にまでは至らなかった。しかし、アメリカは、本当の「文明の衝突」を引き起こしたいのだろうか?
北朝鮮が「悪の枢軸」に対抗してアメリカを「悪の帝国」と呼んで非難した(資料8)のは、今までの行動パターンから見てむしろ当然の成り行きであろう。し かし、極めて理性的で教養の深いハタミ大統領が「戦争屋的な態度」と呼んだ(資料5)ことは、無視しえない。革命記念日(11日) には、イランは反米一色になり、大統領も「米国の政策はシオニストに影響されている」と述べ、「イラン国民を根拠なく侮辱することは許さない」、(「米国 に死を」と叫ぶ群衆を前に)「米国の指導者達は、自分が世界の支配者だと思っている。大人気ない彼らに目覚めてほしい」と演説したという(朝日、12日、16日、資料18も参照)。
まず間違いなく、思想的に見れば、アメリカ政権担当者よりもハタミ大統領の方が高い教養・見識を有しており、北朝鮮の場合のように、その言を単純に扇動と 片付けるわけにはいかない。ビンラディン氏やオマル師の場合ですら、精神性においてはアメリカ当局者を凌駕しているのではないかと疑ったのであるが、ハタ ミ大統領の場合は、精神性は言う迄もなく、理性や教養においても優劣は明らかであろう。
ハタミ師の反米演説は、決して単なる扇動演説ではなく、アメリカの非常識な態度に困惑した上での批判であろう。「大人気ない彼らに目覚めてほしい」という 言には、私も全く同感である。北朝鮮の金総書記ですら、「悪の枢軸」と名指しされて「思い悩み痛ましい様子」であったという(資料22参照)。
イランはおろか、北朝鮮の言うことは、全て非合理な宣伝であるという常識がここでは当てはまりそうもない。「悪の枢軸」を語る者こそ、「悪の帝国の戦争屋」であるかもしれないのである。
■4.アメリカの国益による戦争ーー介入の真実
ここから改めて明らかになったことは、例えばオマル師・タリバーンやフセイン大統領の思想や政策が非人道的だから、人々を助けるためにアメリカが攻撃する のでは全くない、ということである。ハタミ大統領のイランが非人道的で民衆を虐殺しているという報道があっただろうか? 保守派の抵抗が強くてイランの自 由化がさほど進まない、という点ならば、聞いたことがある。しかし、自由化を推進しようとしている大統領を頂く国を攻撃することが、「人道的介入」だと は、さすがのアメリカも言い得ないであろう。
ア メリカは、多くの場合、それらの政権の人々を救うために爆撃しているのではなく、自らの「国益」(と信じるもの)を達成するために爆撃しているのである。 アメリカの介入事例を見ればこれは自明であるが、この自明の理を直視しない論者が多いので、敢えて強調しておきたい。タリバーン政権の残虐な刑や女性抑圧 から、民衆を救うために爆撃するなどというのは、全くの戯言である。
タリバーン政権の厳格な刑によって、北部同盟支配下の犯罪行為の横行が抑止されたのであったし、女性「抑圧」は、アフガニスタンの田舎の習慣の強制であ る。女性抑圧により爆撃するならば、サウジアラビアも爆撃しなければならないであろう。既に、新政権の下で犯罪の増加が報道されている(資料23)し、ド スタム将軍など軍閥同士の内紛や地方勢力間の武力衝突が伝えられている(2)。それどころか、この文章の執筆中に、政権内部の反目で、国防省のアブドラ・ ジャン・タフィディ司令官、カランダル・ベグ国防次官、ハリム検事らによりアブドル・ラーマン航空・観光相が殺害されるという驚くべきニュースが飛び込ん できた(資料22)。再び内戦状態に戻って殺戮が始まらないように願うばかりである。
それ故、タリバーン政権攻撃の名目は、戯言であると同時に、アメリカの宣伝ないし扇動(プロパガンダ)なのである。アメリカの軍事行動の目的は、敵対者の討伐という一点にある。この 真実から目を逸らして、例えば「解放されて喜ぶ女性」の映像を流すこと、それに踊らされることは、「戦争宣伝(プロパガンダ)」に惑わされているのであ る。女性の抑圧を悲しむ者が、無実の民衆の頭上に爆弾を降らせるだろうか? 田舎の旧習は、爆撃で打破すべきものではないのである。
アメリカは、イランの政権は、なおイスラーム政権だから民衆を抑圧しているとでも言うのだろうか? もはや、このような戯言に惑わされる人はあまりいないだろうから、これはプロパガンダにすらならないかもしれない。
■5.パレスチナ戦線ーー全面戦争の危機
他方、パレスチナ情勢はますます悪化してきた。改めて言う迄もなく、イスラエル(ーアメリカ)のパレスチナ人虐殺政策は目に余る。シャロン首相こそ、典型的な「戦争屋」、否、それ以上の「戦争狂」である。
イスラエルが自治政府を「テロ支援体制」と決めつけ、断行を宣言したのに対して、アラファト議長ら自治政府は、「武装闘争禁止」を宣言する演説を行い (12月中旬)、ハマスら過激派も同意して1月上旬まで自爆テロを停止させることに成功し、自治政府の権威と実力を示した。これは和平への好機であった
それにもかかわらず、イスラエルは武器密輸を問題化したり過激派を暗殺したりして、過激派をして自爆テロ再開へと走らせた(1月9-10日)。これに対し て、イスラエルは報復し、「イスラエルによるファタハ武装メンバー暗殺(14日)→ファタハ武装部門による銃乱射事件(イスラエル北部、17日)→自治区 トルカレム占拠・ナブルス侵攻・ハマス4人殺害(22日)/ファタハ武装部門小銃乱射(西エルサレム、22日、40人負傷)→ハマスのガザ地区指導者暗殺 (24日)→テルアビブ自爆テロ(25日)→ガザ・トルカレム自治政府治安施設空爆(25日)」と続く。これに対して27日には、初の女性自爆テロ(西エ ルサレム、1人死亡140人負傷)が起きた。イスラエル・パレスチナ双方の強硬派は「全面戦争」を求め始め、情勢は悪化の一途を辿っている。もはや停戦や 和平を願う段階ではなく、全面戦争の回避がとりあえずの目的となっている状態である。
停戦の好機が生まれる度に、イスラエルは過激派幹部などを暗殺して、自爆テロを誘発しているのだから、停戦が実現するはずもない。事態を冷静に見れば、イ スラエルの方針は、「反テロ戦争」の論理を借用して、一歩一歩自治政府の権威を低下させ、アラファト議長を失脚させて、オスロ合意を廃棄し占領を固定化さ せることに他ならない。シャロン首相は、(82年の国防相としてレバノン侵攻を指揮してPLOをベイルートから退去させた際に)「アラファトを抹殺しな かったことを後悔している」と語っているのである(31日、朝日1日)。
場合によっては、全面戦争も辞さないであろう。全面戦争になれば、イスラエルの軍事的勝利は、短期的には、火を見るよりも明らかだからである。シャロン首 相は、本当は、占領の固定化どころか、自治政府を解体し、パレスチナ人をパレスチナから追い出して、全土をイスラエルの正式の支配地にしたいのではなかろ うか?
既にパレスチナに火は燃え上がってしまった。もはや単に「パレスチナ紛争」というよりも「パレスチナ戦線」と呼んだ方が適切かもしれない。
■6.戦争狂と戦争屋ーーテロ国家同士の親分ー子分関係
これは、シャロン個人のかねてからの「野望」であろう。しかし、それが実現しかかっているのは、盟友アメリカに「戦争屋」が現れたからである。反「テロ」世界戦争の論理とは、「戦争屋」の論理なのである。
昨年12月から議長をラマラで軟禁状態に置いているイスラエル政府は、アメリカにも断行を迫った。アメリカも、既に1月24日にイスラエルの行動について 「理由を理解している」(フライシャー大統領報道官)とし、アラファト議長に対してブッシュ大統領自身が(武器密輸船事件に対する対応について)「非常に 失望している」と語った(1月25日)。自治政府との関係断絶も検討を始めたという。
そこで、シャロン首相の訪米に合わせて、イスラエルは2月4日に過激派(パレスチナ解放民主戦線)武装部門軍事指導者らの車を爆発させて爆死させた。その報復として、ハマスは入植地を襲撃して3人殺害し(6日)、それに対して自治政府施設を空爆した(7日)。
この狙いは、この際、一気にアメリカを自治政府と関係断絶に向かわせようとするところにあったと推測される。さすがに、今回はアメリカは関係断絶に踏み切 らず、関係継続を表明した(7日)。「戦争狂」が「戦争屋」を説得している構図であり、「戦争屋」は辛うじて「戦争狂」にはならずに踏みとどまった。しか し、イスラエルの自治政府孤立化政策には支持を与えている。
ビンラディン氏は「テロリスト」で、ブッシュ大統領は「対テロ戦争」を唱える「政治家」であるという姿勢を取る事が、これまでは可能であった。湾岸戦争時 に、フセイン大統領は「ファシスト」の「独裁者」のようにして攻撃された。しかし、ハタミ大統領は、どう見ても「テロリスト」ではないし、「ファシストー 独裁者」でもない。また、パレスチナ側のテロを批判して抑制を呼びかけている現在のアラファト議長も、「テロリスト」とは言えないだろう。
むしろ、アラファト議長のインタビューを見ると、正義がパレスチナ側にあることが明確になる。
「24日間、暴力が止まった。シャロン首相は『7日間の暴力停止』を停戦実施の条件としたのに、なぜ、停戦を実施しないのか。暴力停止は、イスラエルが停戦を逃れる口実に使っているだけだ」
「我々はイスラエルに対する(過激派の)テロを非難する。しかし、イスラエルが西岸やガザで続けている軍事占領も国際法に違反するテロ行為だ。」(1月14日、朝日)
やはり、占領して過激派の暗殺を続け、自治政府の長を軟禁状態に置くイスラエルは、「テロ国家」であり、それと連携して世界中に戦争を拡大しようとするア メリカも「テロ国家の親分」なのではないだろうか。つまるところ、この両国関係は、テロ国家同士の親分ー子分関係であり、帝国とテロ国家との恩顧主義的関 係なのである。やくざやマフィアに似て、「親分」は「子分」よりも、少しだけ「上品」に口実を付けて無辜の民を殺すけれども。
10日には、ガザ自治区北部からハマスのロケット弾「カッサム2」がイスラエル領内に打ち込まれ、イスラエ南部のベールシェバの軍南部司令本部入り口付近 でパレスチナ人の銃乱射事件が起こった。これに対して、シャロン首相らは「状況は新段階に入った」として、10・11日に、ガザを報復空爆し(数十人負 傷)、ガザを占拠して安全保障地帯を設定する構えを見せている。
これに対して、自治区では、11日群集が刑務所を襲い、ハマスやイスラーム聖戦の過激派10人以上を脱獄させた。民衆の人心がどこに向かっているかを象徴的に示す出来事であり、フランス革命のバスチーユ襲撃を連想させる。14日にはイスラエル軍最新鋭戦車が爆発で大破された。イスラエルの報復は必至で、暴力の連鎖は止まる所を知らない(帰結については、資料22参照)。
テロ国家としては、イスラエルの方がアメリカよりも徹底している。テロ国家の子分のほうが、その親分よりも荒々しく軍事力を行使する。親分は、この鉄砲玉のような子分を制御できるだろうか?
■7.中東戦線ーー第5次中東戦争への火種
パレスチナの全面戦争化とイラクーイラン攻撃は、かねてから危惧していたような「第5次中東戦争」勃発への危険を意味する。「異教徒軍の駐留の長期化」に ついてサウド王家も批判を受け始め、イスラーム過激派封じに乗り出した(朝日、1月11日)。国内反米イスラーム教指導者が何故か発作で急死し(19 日)、サウジ高官らが「米軍が長居しすぎている」と述べ、米空軍(約5000人)の基地からの撤退を要請する可能性がワシントン・ポストで報じられた (18日、朝日22日)。このような状態の中でアメリカ単独のイラク攻撃が開始されれば、中東全域が不安定化することが懸念される。
既 に「反『テロ』世界戦争」は第2戦線が開始されている。1月にフィリピンに、イスラーム過激派アブサヤフ掃討のために特殊部隊や米軍を派遣した。南部で行 われる米比合同軍事演習「バリカタン02-1」に参加し、これは単なる「対テロ演習」であるとしているが、実際の戦闘に参加しないという保証はない。それ 故に、「比国内での外国軍の戦闘を禁じた憲法違反」という批判の声が上がっており、米軍と比軍との間では指揮権をめぐる緊張も生じている(2月1日朝 日)。当初は「米軍はフィリピン軍の指揮下に入る」としていたが、結局は(部隊レベルでは米軍は独立した展開はできないとしながらも)現場レベルでは両軍 は独立した指揮権を持つことになった(13日)。
この決着は、アメリカの意図や誇りから見て、当然のものであろう。全く軍事力を行使しえないならば、そもそもフィリピンでまず軍事的展開をする意味がない し、米軍が比軍の指揮下で動こうはずもない。しかし、フィリピンの憲法秩序は、これで蹂躙されるかもしれない。それは、アメリカにとって顧慮するには足り ないことである。アメリカは、自分の都合によって当該地域の憲法秩序を変えればいいと考えるのであろう。これが、後述する「帝国主義」的思想様式であり、 憲法第9条をめぐって日本に対しても戦後しばしば見られるところであった。
フィリピンでも無辜の死者が出るかもしれない。しかし、フィリピン戦線自体は、政府が協力的であるが故に、アフガニスタンほどの大きな問題にはならないで あろう。しかし、これが先例となって、他の様々な地域に戦火が拡大していくことが恐ろしい。これを先例として、イラクなど中東に軍を進めようとする意図が 明確だからである。
■8.北朝鮮戦線ーー第2次朝鮮戦争と周辺有事
危険は、「文明の衝突」による「中東戦争」だけではない。アメリカは「反『テロ』」を名目にしながら、その実、「テロ」とは直接関係のない国家を攻撃の対 象としつつあるからである。特に、「悪の枢軸」には、北朝鮮も入っているから、これは日本にとっては重大な問題である。アメリカこそ「悪の枢軸」であると 非難した北朝鮮との間に戦端が開かれる危険を完全に無視することはできない。これは、「第2次朝鮮戦争」を意味する。
もちろん、万一本当に戦争が起これば、北朝鮮は敗北し、政権は転覆するであろう。しかし、断末魔の北朝鮮が何をするかは、予断を許さない。問題のミサイ ル・テポドンを日本に発射する危険も完全にないとは言えない。日本は有事立法を行った上で、アメリカに軍事的協力を行う可能性が高い。それに対して、報復 を企てる危険がありうる。
ドイツ・ハンブルグで、テロとの関連で家宅捜索されたスーダン人学生の部屋から、ベルリンのイスラエル大使館と日本大使館の設計図が発見された(1月31日)。 つまり、日本も、アメリカに軍事的に協力しているが故に、過激派の標的となりつつあるのである。「参戦」は、このような意味において国民を危険に晒すこと である。そして、朝鮮有事の際には、この危険は格段に大きい。中東戦争の場合に比べて、朝鮮有事はまさに周辺の非常事態である。もはや対岸の火事ではあり 得ないのである。
■9.反「テロ」世界戦争ーー世界大戦への類比と論理の転換
地球的平和問題会議の際には、反「テロ」世界戦争という呼称を提起した。その際は、「世界戦争」という表現は、少し強すぎるという懸念がなくもなかった。 アメリカの意図は、「反テロ」を旗印にして世界中に戦線を拡大するところにあるが故に、このような呼称を考えたのであるが、第1次・第2次世界大戦のよう な「大戦」となるとは必ずしも考えてはいなかったからである。
しかし、「悪の枢軸」発言は、アメリカ大統領自身は、世界大戦に喩えられるような戦争を起こしたいと考えていることを意味している。言う迄もなく、「枢 軸」とは、第2次世界戦争における枢軸諸国、すなわち、ドイツ・日本・イタリアのことを指すのであり、それに喩えて、イラク・イラン・北朝鮮を「悪の枢 軸」と呼んだものだからである。この意味では、正に「世界戦争」という表現は、アメリカ大統領の自己意識からみても適切なものだったことになる(資料6、 12参照)。
また、反「テロ」という表現におけるか「 」の意味も、この上なく明瞭になった。「悪の枢軸国」は、実は同時多発テロ問題とは殆ど関係がないからである。 大統領は、あたかも関係が有るかの如く述べているが、論理は大きく転換している。すなわち、「大量破壊兵器」を所持する国は、テロ支援をする可能性がある から、攻撃すべきである、という。問題は、テロ支援の有無ではなく、大量破壊兵器の有無になっているのである。この論理のもとに、現在はイラクや北朝鮮に 査察要求を突きつけている。
以前に指摘したように、これは信じがたいような二重基準である。もちろん、もっとも大量破壊兵器を所有している国家、そして使用している国家は、米国であ る。アメリカは、テロの如き違法な暴力の行使をしたことがないわけではなく、ラテン・アメリカを始め、数々の地域でそのような先例を有している。アフガニ スタンでは、原爆に準じるような非人道的大爆弾(デイジー・カッター)を用いた。今日(14日) も、イギリスとともに、未臨界核実験をネバダ地下実験場で行い、包括的核実験禁止条約(CTBT)死文化させようとしている。そして、イスラエルにF16 戦闘機や攻撃用ヘリを供給して、パレスチナ人に対する明白な国家テロを支援している。大量破壊兵器所有国は確かに危険である。しかし、テロ支援をする大量 破壊兵器所有国を須らく爆撃しなければならないのならば、まずはアメリカを爆撃しなければならない。
■10.覇権国の帝国主義ーー米帝国論
結 局のところ、アメリカの真意は、「テロ」云々にあるのではなく、自らに軍事的・政治的に歯向かうような可能性のある国家の政権を壊滅することにあると言わ ざるを得ない。もちろん、このような観点から見れば、その一番手がイラクである。それ故に、フセイン政権を崩壊させることが必要なのである。
軍事的・政治的に反対する国家を軍事力によって壊滅させるという発想は、覇権国の帝国主義と言わざるを得ない。「米帝」などという、左翼の手垢がついた表 現を副題に付したのは、この点を明確にするためである。もちろん、私は、マルクス主義や新左翼には組するものではなく、そこで言われるような「アメリカ帝 国主義」論には必ずしも賛成しない。しかし、彼らの常套句が、今や真実味を帯びてしまっている点に、注意を喚起したいのである。
これは、決して私の奇異な思いつきではなく、実は、ブッシュ政権の支持者自身が明確に意識しているところであり、肯定的に推進しているのである。既にHP には、この種の帝国主義論についての記事をリンクしてある(3)が、朝日新聞も紹介したので、その記事を要約しておこう。
●見出し 「米帝国論」の震源に、こわもて政策研
単独行動主義 下支え 対イラク強硬論を進言 「レーガン政策」へ傾斜
著 名コラムニストで保守系雑誌「ウィークリー・スタンダード」の主幹のウィリアム・クリストス氏が5年前に創設した外交・安保問題の研究所「新アメリカの世 紀プロジェクト」(PNAC)。この中心的思想は、「軍事力を積極的に行使し、自由や人権、民主主義、資本主義といった米国的価値観を世界に普及させる新 保守主義」(ドネリー副事務局長)で、ニクソン流の現実主義的保守主義とは異なり、レーガンのように米国的価値観を「十字軍」のように広めることを目指 す。「帝国主義」と呼ばれることは嫌うが、「パックス・アメリカーナ(米国支配による平和)」を公然と唱える。このもとに、イラク・フセイン体制打倒を求 め、国防費増大を主張する。
副事務局長のインタビュー「世界に米の原理を」
「力(パワー)を積極的に行使するよう政府に働きかけ、米国の原理原則を世界に広めることが目標だ。反民主主義的な敵は「米国の覇権主義」と批判するが、強大な米国の力を認めざるを得ない。
具体的には、政権内の多くの友人と接触するほか、ワシントンの重要人物2500人にニュースレターを出している。
ブッシュ大統領は、米国の過去を恥じるベトナム戦争時代のクリントン前大統領と異なり、米国の指導力を発揮するだろう。だが、(国家間の)力のバランスだけを信奉する現実主義者が政権内にいるので心配だ。
イラクのフセイン政権打倒が望ましいという点では、政権内の認識はほぼ一致している。問題はどう倒すかだ。地上軍を当初から大胆に投入し、反政府勢力の蜂起を促すべきだ。
…
最近、欧州諸国の対米協力を取り付けることがますます難しくなってきた。この点、日本の対テロ戦での協力は前向きだ。欧州も日本のように成熟してほしい。」(2月1日、金曜日)●
■11.アメリカ帝国主義の思想ーー政権への影響力
こ の研究所の設立趣意書には、チェイニー副大統領、ラムズフェルド国防長官、ウォルフォビッツ国防副長官、ロドマン国防次官補、リビー副大統領首席補佐官、 カリルザード・アフガン担当大統領補佐官、アブラムズ国家安全保障会議部長、ドブリアンスキー国務次官などのブッシュ政権幹部が賛同しており、「悪の枢 軸」発言などの政権の方針に大きな影響を与えていることは、疑いない。その他にも、ジェブ・ブッシュ・フロリダ州知事(大統領の実弟)、クエール元副大統 領、フランシス・フクヤマ、ローゼーン・ハーバード大教授、コーヘーン・ジョンズホプキンズ大教授などが、名を連ねている。
逆に言えば、現政権の方針は、従来の良識からすれば信じがたいものであり、このような思想的背景を知って初めて理解できるものなのである。これは、もちろ ん、「帝国主義」思想に他ならない。ローマ帝国が「パックス・ロマーナ」を実現したように、また大英帝国が「パックス・ブリタニカ」を実現したように、今 やアメリカは「パックス・アメリカーナ」を実現すべきだとする。
上のインタビューにいう、政権内の「現実主義者」とは、たとえばパウエル国務長官のことであろう。帝国主義者は、権力均衡論を意識する現実主義者を批判す る。要は、他の国家の言うことなど気にせずに、帝国に歯向かう国家は、攻撃すべきだということである。思想的に帝国主義を信奉しているからこそ、イラク先 制攻撃のような暴挙を敢えて公言することができるのである。
この研究所の同調者、そしてその影響下にあるブッシュ現政権要人ーー彼らは、正に言葉通りの「(アメリカ世界)帝国主義者」なのである。
■12.文明論的帝国主義論ーーアメリカ原理主義の軍事的強制
左翼的な帝国主義論は、経済的支配をその根源とみなし、たとえば「リベラル」で国際的協力を行う場合でも、アメリカを「帝国主義」と見倣す。私自身は、この用法とは一線を画し、以上のような思想を政策にまで反映させた現政権について、「アメリカ帝国主義」と呼ぶ。
この「帝国」観念は、アイゼンシュタットのような文明論的観念を背景にしているから、これを「文明論的帝国主義論」と呼ぶことができよう。ローマ帝国・中 華帝国のような「帝国」の理論である。多くの場合、このような「歴史的帝国」は、軍事力を背景にしながら、思想的にも「普遍主義的思想」を正統思想として 制度化し、時に軍事力で強制する。
アメリカ帝国の場合、上の記事にある「自由、人権、民主主義、資本主義」がその「普遍主義的」な正統思想であり、この「原理原則」を力によって世界に強制 しようとするのである。いわば、これらの「原理原則」は「アメリカ原理」であり、それを世界に強制しようとする点において、これは「アメリカ原理主義」で あり、かつ「アメリカ帝国主義」である。歴史的な帝国主義は、「官僚制的帝国」(アイゼンシュタット)が多かったが、アメリカ帝国主義は、いわば「民主制 的(リベラル、資本主義的)帝国主義」ということができるであろう。
この観点から見れば、グローリゼーションとは、アメリカ帝国主義の経済的表現であり、その第1段階であった。グローバリゼーションも含めたアメリカの覇権 に対して、イスラーム過激派が暴力により抵抗し、それに激昂したアメリカは、軍事的帝国主義の段階に入ったのである。いわゆる「帝国」は、経済はもちろ ん、政治的にも、文化的にも、覇権を握り、その覇権は最終的には軍事的に担保される。アメリカ帝国の経済的原理は、いわゆる「新自由主義」によるグローバ ルな資本主義であり、その文化的・政治的原理は民主主義や人権である。
■13.新帝国主義論ーー「皇帝」による帝国法の形成
帝国と呼ぶからと言って、アメリカを史上の野蛮な帝国と同一視しようというのではない。歴史上の多くの帝国に比して、民主主義や人権を擁護するという点で は、理性的・人道的な要素の比較的強い帝国であると言うことができるかもしれない。その意味では、「民主制的帝国」とは、「官僚主義的帝国」とは異なった 「新帝国主義」であると言えよう。文明論的帝国主義論は、マルクス主義的帝国主義論とは異なって、各種帝国の文化的側面をも重視し、帝国であるからと言っ て、一刀両断に批判することはしない。その意味においても、文明論的帝国主義論は、「新帝国主義論」と言うことができる。
つまり、アメリカ帝国主義は、民主制的帝国主義であるという点において、「新帝国主義」であり、それを把握する文明論的帝国主義論も、「新帝国主義論」なのである。
帝国主義の観念は、分析的概念であるが故に、即価値的に「悪」を意味するものではなく、ーーちょうど恩顧主義論の場合と同じようにーー帝国の中でも相対的 に「良い帝国」と「悪しき帝国」とを区別できるであろう。アメリカの民主制的帝国は、民主制や人権の観念を有している分、歴史的帝国と比べれば、相対的に は「より良い(ましな)帝国」であろう。しかし、この「新帝国主義」も、また一つの「帝国」であることは疑いない。
様々な国際協定をアメリカが一方的に破棄したり、妨害したりするのは、アメリカが帝国主義に傾いてきているからである。「単独行動主義」という用語は、も はや婉曲的に過ぎよう。気に入らない国際条約を一方的に破棄するのは、帝国主義者にとっては当たり前である。帝国は、世界秩序を自らの意のままに形成しよ うとする。
帝国の法は、諸国の合意によって決めるのではなく、「皇帝」が決めるのである。アメリカは、単に「単独行動主義」を取っているのではない。それは、「世界 帝国」を確立しようとしているのであり、「単独行動主義」による既存の世界秩序の破壊は、世界帝国確立への序曲なのである。
今日、温暖化防止の京都議定書を退けて、産業界の「自主的努力」による独自の「温室効果ガス削減計画」(!)を公表した(15日)のも、このような観点からは容易に理解できる。温室効果ガスの総量を規制するものではなく、目標が達成されても、12年には90年に比してガス排出量は30%も増えることになるという(京都議定書では、日本6%減、EU8%減)。「汚染企業へのバレンタインデープレゼントだ」(世界自然保護基金)「全く意味のない目標だ」(リーバーマン民主党上院議員)という言葉で、評価は言い尽くされている(朝日、15日夕刊)。
しかし、合意が殆どできていた京都議定書を斥けて、自らの都合の良い「政策」を世界に提示するのは、帝国主義者にとっては当たり前である。帝国の法を決め るのは、「皇帝」の専権事項であるからである。このような発想に基づいて、キューバのグアンタナモ米海軍基地のアルカイダ兵らを戦争捕虜と認めずに、「非 合法戦闘員」などという曖昧な位置づけにしようとしたのであった。人権団体や国際社会の批判を浴びてタリバン兵にはジュネーブ条約を適用することにしたも のの、アルカイダ兵には認めず、依然として双方とも戦争捕虜とは認めない、としている(7日)。このため、人権団体に批判を浴びているが、ラムズフェルド 国防長官はジュネーブ条約はテロを予期していないから時代遅れであると強弁している(資料16)。
このように国際法を無視する態度は、同時多発テロ事件以後繰り返し現れてきており、自衛権に基づく戦争という論理自体がその典型であった。要するに、帝国 は、自らを制約する国際法などは認めたくはなく、都合に応じて適宜変更しうるものと見做しているのである。帝国「皇帝」は、自ら法を制定するが故に、他国 の意思には制約されない、というのが率直な論理であろう。
このような「単独行動主義」的態度を見て連想するのは、ジョージ・オーウェル『動物農場』における、革命後の支配者・豚のナポレオンの有名な文句である。「全ての動物は平等である。しかし、他の動物よりも、より平等な動物もある(All animals are equal but some animals are more equal than others.)」
例 えば、他国は京都議定書を遵守しても、アメリカは京都議定書を守る必要はなく、自らの「計画」を示すだけでよいのである(資料22「議定書と二重構造 に?」参照)。ジュネーブ条約にもアメリカは拘束されず、アメリカを攻撃したアルカイダ兵らをーーその人権など顧慮することなくーー随意に取り扱ってよ い。
もっとも、これは第1歩に過ぎないかもしれない。未臨界核実験の場合などでは、包括的核実験禁止条約を死文化させ、核兵器に回帰しようとするものであり、 核不拡散体制を崩壊させる。つまり、アメリカ一国だけではなく、世界全体の安全保障体制を全面的に変化させてしまうのである。この場合は、アメリカだけが 拘束されないのではなく、アメリカの意思に合わせて世界の法的秩序を変えてしまうことになる。国際法とは、今後は、帝国「皇帝」が定めるものであり、いわ ば「帝国法」となるべきである、ということになる。
歴史上の帝国は、いずれも大陸規模の帝国であった。しかし、アメリカ帝国は、大陸を越え、世界全体に亘る帝国、すなわち「世界帝国」たろうとしているよう である。父親のブッシュ大統領は、「世界新秩序」という観念を謳いあげた。子のブッシュ政権で、この観念は蘇り、その内実はアメリカ世界帝国という「帝国 主義的世界新秩序」であることが明らかになったようである
■14.アメリカ帝国主義的覇権戦争ーー帝国主義的世界新秩序へ
上述した戦争の論理の転換は、この点を浮き彫りにしている。反テロの論理だけならば、必ずしも帝国主義国ではなくとも、理解・支持が可能であるが故に、ヨーロッパをはじめ世界の諸国は、これを支持した。また、アメリカの「自衛戦争」という論理も、承諾したのである。
しかし、イランはもちろん、イラクや北朝鮮ですら、テロとは直接関係が見つかっておらず、またアメリカを攻撃する予兆もない。したがって、「悪の枢軸」に 対する攻撃は、「テロ」攻撃に対する自衛戦争ではありえない。アメリカ帝国に服従しない小癪な国家に対して、先制攻撃を加えて軍事的に壊滅させようとする 戦争は、「帝国主義戦争」としか呼びようがない。これらの「悪の枢軸」諸国を壊滅させれば、世界にはアメリカに反抗する国家は、存在し得ないであろう。こ れが、この背後にある論理であろう。したがって、この戦争は、アメリカ帝国が世界帝国としての確立を目指す「アメリカ世界帝国主義覇権戦争」なのである。
反「テロ」世界戦争という呼称は、上述のように、「世界戦争」というアメリカの自意識を捉えていた点において、正確なものであることが明らかになった。し かし、「 」を付して留保したとは言え、反テロというアメリカの「大義名分」を用いざるを得なかった点において、なお釈然としないものがあった。
「悪の枢軸」演説において、初めてこの戦争の本質が可視的なものになったと言えよう。この戦争の本質は、「反テロ」にあるのでなく、「テロ」を契機とし て、アメリカが世界帝国として自らを確立しようとするところにあるのである。その意味では、アメリカ政府自身の意図に即して定義すれば、「アメリカ世界帝 国確立戦争」であり、批判的に述べれば、「アメリカ世界帝国主義覇権戦争」、略して「米帝世界戦争」である。
■15.アメリカ世界帝国主義論ーーエンロン疑惑と地球的公共悪
私自身、同時多発テロ事件以前には、ブッシュ政権には批判的ではあっても、それに帝国主義概念を適用しようとは全く考えていなかった。しかし、今や、帝国 主義論を再び真剣に考えなければならないようになりつつあるようである。いわば、「アメリカ世界帝国主義論」とでも言えようか。
マルクス主義的帝国主義論は、現在では用いることはできない。しかし、文明論的に見て、「帝国」は史上に繰り返し現れてくる現象であるが故に、今日でもな おその可能性を無視し得ない。そして、帝国は、いかに「正義」の存在を自称しても、「皇帝」の恣意による法や政策を強制力により強行する限り、それが地球 的公益と合致する保証は全くない。否、それが合致するのは稀な「名君」の時に限られる。むしろ、地球的公益に反して、帝国支配層の私的利益を強行しようと することが大部分であるが故に、帝国は地球的公共哲学の観点から批判的に考察される必要があるのである。
エンロン疑惑から、新自由主義的な電力の「自由化」政策が実は企業の私的利益を確保するためのものであり、政治家に対するエンロンの資金の献金=ばらまき によって推進されたものであることが明らかになりつつある。この結果、エンロンの電力売り惜しみによって、カリフォルニア州の電力危機が生じたのであった (4)。つまり、恩顧主義的政治によって、電力という最も公共的な財が供給不足に陥ったのである。恩顧主義的私的利益が公益を損なうという、典型的な例で ある。ブッシュ政権が、市民団体や米会計検査院に対して情報開示を拒んで、これらに告訴される(資料21)のも、この真実を知られたくないからであろう。
かくて、帝国の経済思想たる新自由主義はエンロン疑惑と共に失墜しつつある(5)。この事件に象徴されているように、この帝国建設の支配層が私的利益に蚕 食されている状況証拠は数多く、京都議定書問題に見られるように、彼らが地球的公益を真剣に考慮しているという気配は全くといってよいほど感じられない。 それどころか、エンロン疑惑から逃れるためにも、テロの危険を言い立てたり、対イラク攻撃の可能性を言明したりしている節が見え隠れしている。
エンロン事件は、カリフォルニア州の電力供給不足という地域的な被害を生んだのであるが、反「テロ」世界戦争は、正に世界的に多くの人命そのものを奪う。 これは、私的利益のための「地球的公共悪」そのものである。それ故にこそ、この帝国建設と世界帝国主義戦争には反対の声を挙げざるを得ないのである。
■16.21世紀の世界帝国主義ーー新植民地化
20世紀の帝国主義の時代に、典型的な帝国主義戦争を行ったのは、イギリスやフランスであり、それに対抗しようとした後発帝国主義がドイツや日本であり、その間の衝突が両次の世界大戦であった。
私はこれまで帝国主義の時代は終わったと思っていたのだが、今回の戦争はこの認識を覆すものであった。21世紀において、グローバリゼーションという形で の経済的覇権だけではなく、政治的・軍事的覇権も含んだ「アメリカ世界帝国主義」の危険が立ち現れてきたからである。現時点では、これは、批判的認識とし て現れてきているというよりも、それよりも早く、帝国建設者の積極的・肯定的認識として展開しており、思想的に拡大しているだけではなく、政権の原理と なっている。それだけに、事態は深刻であり、この小文は、その事態に批判的・学問的認識が追いつくための些やかな努力でしかない。
21世紀の帝国主義の行方は、19-20世紀の帝国主義の歴史から考察することができよう。かつての帝国主義においては、当初、英仏の帝国は、世界各地の 王国や政権を転覆し、直接的ないし間接的な植民地化を進めた。その過程で、激戦や英仏側の犠牲もあったが、もちろん、現地人の犠牲とは比較にならず、その ような犠牲を乗り越えて、植民地化は進んでいった。植民地においては、帝国に協力する人々もいたし、間接植民地においては傀儡政権も作られた。それは、相 対としては残酷な支配でありながら、完全に非人道的であったのではない。帝国主義の時代にあっても、現地に行って福音を真剣に述べ伝えようとする宣教師も いたのである。
ある意味では、アフガニスタンで見ることのできるのは、このような過程である。ある推計によると、12月6日時点で3767人、1月24日までで既に 3850ー3900人である。一方、アメリカの同時多発テロの犠牲者数は、約5000人という当初の見積もりよりも少ないことが明らかになっており、 3225人である(12月6日)。従って、私が繰り返し警告したように、アフガニスタンの無辜の犠牲者数は、やはり同時多発テロの犠牲者数を超えてしまっ たことになる(資料20参照)。かくて、アメリカの頭上にもはや「道義」はない。
しかし、このような無辜の民の犠牲はものともせずに、歴史は進む。アフガン復興会議も、このような観点から見れば、傀儡政権の樹立と見ることもできよう。そこには、善意も確かに存在する。帝国主義時代における宣教師のように。
アフガン戦争ないしアフガン戦線は、このような意味における帝国主義的戦争であり、「新植民地化」ーーあるいは「再植民地化」--を帰結したかもしれな い。同様に、イラク戦争などの中東戦争や、朝鮮戦争も、同様の帝国主義的戦争であり、やはり同様の「新植民地化」を帰結するかもしれない。
これは、決して穿った見方とは言い切れない。注(3)の田中宇氏の文章によれば、ウォールストリート・ジャーナルでもア、「テロリズム対策の決定打は植民 地主義」(ポール・ジョンソン)であるというような論説が掲載されており、かつて海賊を根絶するために(その拠点となっていた)北アフリカ(仏)やイエメ ン(英)を植民地にしたように、テロリストを根絶するために、アフガニスタン・イラク・イラン・シリア・スーダンなどは再び植民地にすべきだ、と論じられ ているからである。
10月中旬にアメリカの新聞「シカゴ・サン・タイムス」に載った「帝国主義こそ解決策」という論説では、直接統治に戻す行為を「新植民地主義」と赤裸々に 呼ぶことに抵抗があるなら、クリントンやブレアの得意技だった呼び名だけ美しく飾る手法をまねて「国際社会による支援策」などという名前をつけてやればい い、と結論づけているという。
アフガン復興会議は、正にこのような「支援」会議であった。これも、アメリカの右派系の論客からは「新植民地化のための会議」と認識されているかもしれな い。そして、例えば「テロリストの隠れ家は敵と見倣す」とか「イランが武器をパレスチナに供給したりアルカイダやタリバーン兵がイランに逃げ込んだから、 イランをも攻撃対象に含める」という論理は、正に「海賊を根絶するために植民地にする」という倫理そのものである。
右 派系の論理は、客観的な認識とは言えないかもしれない。しかし、新植民地主義という見方が批判的な見解としてではなく、肯定的な見解として唱導されている ことは、客観的たるべき社会科学にとって重要な示唆を与えてくれよう。これは、アメリカ当局者の自己認識に近いのであり、彼らは主観的な自己認識において すら「帝国主義者」なのである。
■17.帝国主義戦争と世界大戦の危険
イラク攻撃のような暴挙は、ことによると、経済の破綻や内政上の問題・軍事的疲弊をもたらし、帝国主義の野望は砕かれるかもしれない。しかし、無情にもアメリカ帝国が確立し、世界の覇権を握り続ける可能性も存在するだろう。
しかし、だからと言って、これで戦乱が収まるとは限らない。20世紀の帝国主義においては、もっとも深刻な戦争は、帝国主義諸国間で起こった。この観点から見れば、植民地化の過程でおきる戦争は、いわば小競り合いに過ぎない。
アフガン戦線がこのような小競り合いとして記録される可能性も存在しよう。フィリピン戦線は、ある意味では、アメリカ帝国主義戦争にとって象徴的である。
かつて英仏が世界的帝国を作っていたのに対して、イギリスから独立したアメリカは相対的には、このような「旧世界」から離れ、モンロー主義のような孤立主 義的路線を長く取っていた。その結果、「旧世界」の汚染から免れ、後に理想主義的なウィルソン外交などの、進歩的・革新的役割を世界史において担えたわけ である。
このような中で、アメリカが帝国主義的行為に走り植民地化を行った例がフィリピンである。そのフィリピンで、今度は「世界帝国主義戦争」の第2段階を行 う。この歴史から見て、フィリピンは、アメリカが帝国主義戦争を始めるのに、極めて「適切」な場所である。同時に、これは、アメリカの役割の変質をも物語 る。かつては旧世界の「帝国主義」から距離を置き、相対的に汚染されていなったアメリカが、今や「新帝国主義」の中心となっているのである。もはや、アメ リカに歴史の進歩を担う勢力としての栄光はない。逆に、「旧帝国主義国家」たる欧州諸国の方が、その新帝国主義に批判的であり、植民地解放や民族自決とい う歴史的潮流の後退に対して抗っているのである。
フィリピンでは、アフガニスタンの場合よりも小さな小競り合いが起こるだけだろう。反政府ゲリラとの戦いであって、タリバーンのような、政権との戦いでは ないからである。しかし、20世紀の帝国主義時代のように、小競り合いの先には、大きな戦乱が待っているかもしれない。イラク戦線や、パレスチナ戦線は、 イスラーム文明の再結集化をもたらし、「文明の衝突」を招くかもしれない。あるいは、現在はアメリカに協力的なロシアや中国が、それぞれの領域ないし文明 内部で「小帝国」を作り、アメリカ帝国に挑戦することもあるかもしれない。また、これらの文明の間で合従連衡や戦闘が行われることもあるかもしれない。
現在のインドーパキスタンの緊張関係は、このような文明間の衝突の「先駆的」例なのかもしれない。この紛争ですら、核兵器が行使される危険が存在する。まして、これらの本格的な「文明間衝突」に於いてをや。ここにこそ、世界大戦の危険が現れる。
■18.帝国への随従国家からの離脱ーー再び旗を見せることなかれ
アメリカが当初示唆していた大量報復作戦を避け、パウエル国務長官らの慎重な外交的・軍事的戦略を取ったためもあって、アフガニスタン戦線は、ベトナム戦 争化への道を辿らず、ーービンラディン氏やオマル師の行方を別にすればーー成功裏に終わったかのようである。しかし、パレスチナに火は燃え上がり、アフガ ンの無辜の犠牲者は同時多発テロの犠牲者を超え、そして既に米軍はフィリピンへと赴き、イラク攻撃への構えを見せている。イラクを攻撃すれば、再び無辜の 民が数多く死ぬことは、火を見るよりも明らかである。私が時論で懸念した危険は、ほとんど的中しつつある。
しかも、前述したアメリカ帝国主義者は、「最近、欧州諸国の対米協力を取り付けることがますます難しくなってきた。この点、日本の対テロ戦での協力は前向 きだ。欧州も日本のように成熟してほしい。」などと語っていた。日本は、欧州以上に従順な「随従国家」であり、「アメリカ帝国」の子分国家だからである。 アメリカ帝国建設者としては、欧州も始め、他国の全てを日本のような随従国家にしたいのである。
このような目的を達するために、アメリカは再び日本に「旗を見せよ」と迫るかもしれない。その時、日本はどうするのだろうか?
これに応えるような形で、日本は有事法制を制定しようとしており、アメリカ帝国の戦争、特に朝鮮戦争にも「旗」を振って参戦しかねない。そして、同時に経 済には破綻の予兆が見える。日本経済の破綻が現実化すれば、世界経済の破綻にも繋がりかねない。期待を託すに足る政治家・政党がごく少ない以上、その時、 日本政治は混乱の極みとなろう。世界にせよ、日本にせよ、「おお神よ!」と天を仰ぎ見たい気持ちにもなるであろう。
こ のような陰鬱な近未来を避けたければ、恩顧主義的政治経済から脱却して、平和への意思を確立し、アメリカ帝国主義者の野望を砕く他ない。もっとも重要なの は、イラク攻撃などの戦乱の拡大に反対の声を上げて、アメリカの意気を殺ぐことである。現在、ロシアや中国はもちろん、欧州などアメリカの友好国も殆ど一 様に「悪の枢軸」発言を批判し始めている。ここで、国際的に一斉にアメリカの姿勢を批判し、アメリカを孤立させて始めて、イラク攻撃という野望を諦めさせ ることができるであろう。
日本も、諸国と共に声を上げることが求められているのである。ゆめ再び「旗を見せる」ことなかれ!
■19.外相辞任後の日本政治ーー内外恩顧主義からの脱却
それにもかかわらず、日本の当局者から「悪の枢軸」発言を批判する声が聞かれないのは、情けない限りである。首相や新外相は、どのように考えているのだろうか?
緒方女史は、賢明にも外相を辞退し、「いちじくの葉」となることを避けた。代わりの川口新外相は、「骨太の改革」をするとしているが、問題は、外務省の家 産官僚的体質を改革することができるかどうかという一点にある。省の内外における恩顧主義的体質の改革であり、政策的にはアメリカに随従する恩顧主義的外 交の改革である。
外務官僚にまず改革案を聞くような姿勢では、その見通しは暗いと見るべきであろう。もっとも、その「骨太の改革」の中で「政治家の圧力の排除」(および 「民間人起用」)には、実現できれば意味があろう。ところが、その微温的改革にさえ、政治家の意見の文書化・情報開示という「透明化」に対して、各種族議 員から反対の声が上がっている。
他方、田中外相解任による支持率低下を受けて、首相が取った方策は何だったろうか? それは、外務省の恩顧主義的体質の抜本改革でもなく、道路改革でもな く、来年4月からサラリーマンの本人負担を3割に引き上げるという医療制度改革の断行である。これに抵抗しているのが、厚生族の族議員なので、首相は「改 革」政治の断行であるとしているが、その「改革」が国民への負担=痛みの押し付けでしかないことは一層明らかになった。
道 路公団などの無駄で「私的」な「公共」事業の削減・改革こそ、恩顧主義政治構造改革の試金石である。この問題を回避して、医療「改革」で、見せ掛けの「改 革」のポーズを保とうとしているのであろう。橋本元首相以下の族議員は、医療制度の抜本改革なしに3割への引き上げを行ってしまうと、財政的には問題がな くなるので、かえって抜本改革が不可能になってしまい、国民に負担を押し付ける結果になってしまう、と反対している。
妙 なことに、外相解任時に政府の経済政策を批判した亀井氏の場合と同様に、恩顧主義的ないわゆる「抵抗勢力」の方が、これらの点については正論を述べている のである。結局のところ、今回の医療「改革」は、政権の「改革」姿勢を印象付け、その変節を取り繕うための政権延命策に過ぎない。しかし、これによって被 害を受けるのは国民なのである。欺かれることなかれ!
そして、ブッシュ大統領の訪日に合わせたデフレ対策。これは、当局の意思統一ができていないのみならず、既に手遅れの感がある。ここまで経済状況の悪化を 放置してきたのは、橋本政権の場合と同じように、新自由主義的経済政策の責任であり、その責任者たる竹中大臣、そして究極的には首相は経済悪化の責任を 取って辞任しなければならない。公共的観点からの経済運営が求められているのである。
政治・行政に期待することができなければ、民衆が自ら反戦平和の声を、そして恩顧主義的政治の改革への声を上げるしかあるまい。そして、世界の民衆と力を 合わせて、反戦平和の声を上げ、帝国主義化を阻止するほかあるまい。帝国への随従国家からの脱皮が求められているのであり、このために必要なのは、国内の 恩顧主義的政治、そして内外2重の恩顧主義的政治からの脱却なのである。
■20.イスラエルの占領地軍務拒否ーー万国の公共民よ、平和のために連帯せよ!
日 本は、アメリカ帝国に随従する子分国家である。これは、ーーローマ帝国の植民市に見られたようなーー帝国に対する付加型国際的恩顧主義(帝国という中心的 秩序に付加される恩顧主義)と言えよう。日本がアメリカにひたすら従順な子分国家であるのに対して、イスラエルは親分たるアメリカを戦争へと向かわせよう とする獰猛な子分国家である。
しかし、そのイスラエルの中からさえ、勇気のある抵抗運動が始まった。軍の予備役兵士の間で1月下旬に50人が新聞に「拒否の手紙」を発表し、第3次中東戦争での占領地(ヨルダン川西岸、ガザ、東エルサレム)での軍務を拒否したのである(資料14・15)。占領地での自治区封鎖や住居破壊、検問などが、パレスチナ人の抑圧であり、本来の国防とは関係がなく、違法だからである。
「…その結果、検問で病人が死んだり、妊婦が検問で出産し、新生児が死ぬような悲劇が度々起こっている。占領によって、我々はパレスチナ人全体を封じ込 め、移動の自由を禁じることで職を奪い、病院や学校に行く権利を侵害している。彼らは不満や怒り、憎悪を募らせ、イスラエルに対する自爆テロのような救い のない行為に走る。
私は国を守る任務なら喜んで軍務につく。しかし、占領はそれ自体が非人道的な行為だ。社会経験を積み、世界のこともわかってくると、占領地で軍務を果たすのは人間として耐えられなくなった。パレスチナ人への抑圧がさらなる暴力を生む。占領の任務は国防にはあたらない。
…軍でのキャリアを放棄しようというのは簡単な決断ではないが、『拒否の手紙』に署名したのは、軍の刑務所に入れられようとも、占領地には行かないという意思表示だ。」(軍務拒否したヘブライ大講師ハイム・ワイス氏 32歳、朝日、2月6日、資料14の隣)
パレスチナ人の悲惨に目を瞑ることのできなかった、このような行動には、人種や宗教を超えた真の人道的な精神が輝き、人の心を打つ。このような運動は、人間の良心の証であり、このような反対の声が人種や民族を超えて広がるところに、人類の希望がある。
アメリカ国内でも、さすがに「悪の枢軸」発言には徐々に異論が現れ始めているとは言え、イラク攻撃支持が77%もある状態(資料6)では、国内での批判には攻撃の抑止を望み得ない。そこで、国際的批判こそ、中東への戦火の拡大を防ぐ唯一の道である。
核不拡散体制を崩壊させかねない米英の未臨界核実験は、被爆国・日本の国是たる反核平和主義・非核国家と全面的に対立する。ブッシュ政権は、国連に日本政 府が提出した核廃絶決議案にインドと共に反対票を投じたのであり、今それを核実験という形で現実化させた。核実験が核不拡散体制を崩壊させるだけではな く、アメリカ世界帝国主義戦争は、インドーパキスタンなどの紛争にも油を注ぎ、世界各地に無辜の死者を生み、さらには核戦争の危険を現実化させる。
日本人にその公共哲学に対する信念があるのならば、勇気を持って帝国に対する随従の姿勢を脱して、反核平和への声を上げなければならない。かつての運動を担った思想の懐かしいフレーズを言い換えてみよう。
「万国の公共民よ、平和のために連帯せよ!」
(2月15日、16日加筆)
(1)米系メディアは、イラン保守派とレバノンのヒズボラとの結びつきや、アルカイダやタリバーンの亡命・擁護などを指摘する。仮にこれらの事実があった としても、大統領をはじめ改革派も存在する以上、その全体を「悪の枢軸」に入れてしまうのは、暴論としか言いようがない。『ニュースウィーク 日本版』2月20日号、「イランの危険な聖戦ゲーム」、30-31ページ。
(2)東部パクティア州では、カルザイ議長が任命したバッチャ・カーン・ザドラン新知事に対して、武力衝突、1月末に死者約60人、マザリシャリフ近辺では、ファヒーム国防相派とドスタム国防次官派との衝突、2日に死者数人など。いずれも、暫定政府に不満を持つラバニ前大統領派が反抗を支援しているという観測がある。朝日、7日。
(3)田中宇「米英で復活する植民地主義」 2001年11月12日
http://tanakanews.com/b1114colony.htm 内容は、資料13。
(4)田中宇「エンロンが仕掛けた「自由化」という名の金権政治 」(2月4日)
http://tanakanews.com/c0204enron.htm
田中宇「エンロンが示したアメリカ型経済の欠陥」(2月11日)
http://tanakanews.com/c0211enron.htm
(5)たとえば、ニュースウィーク日本版2月20日号は、「エンロンの闇ーー疑惑の拡大で揺らいだ市場の真理」と銘打っている。
小林正弥
参考資料
1.一般教書演説(1月29日)。朝日夕刊(30日)より。
米国は断固として、辛抱強く、不屈であり続ける。この戦いには二つの目的がある。ひとつは、テロリストのキャンプを壊滅させ、策謀をくじき、テロリストを 裁きにかけること。もうひとつは、生物化学兵器や核兵器を入手しようとするテロリストや政権が、米国と世界に脅威を与えるのを阻止することだ。
アフガンの訓練キャンプは壊滅させたが、少なくとも十数カ国にまだ残っている。ハマス、ヒズボラ、イスラム聖戦、ジャイシェ・ムハマド(パキスタンの過激 派組織)などテロリストの地下世界は、ジャングルや砂漠、大都市の真ん中にも存在している。最も目に見える活動はアフガンだが、我が部隊は、フィリピン で、ボスニアで、ソマリア沖で活動している。
パキスタンなど多くの国は呼びかけにこたえてくれたが、テロ対策に及び腰の政府もある。行動しないのなら、米国が行動する。
二つ目の目的は、テロ支援国家が大量破壊兵器を使って米国と同盟国を脅かすのを阻止することだ。いくつかは9月11日以降おとなしくしていたが、我々はそ の本性を知っている。朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)は国民が飢えているのに、ミサイルと大量破壊兵器を持つ政権だ。イランはテロを輸出し、選挙で選ば れていない者が人々の自由を抑圧している。イラクは米国への敵意を誇示し、テロを支援し続けている。何十年も炭疽(たんそ)菌や神経ガス、核兵器の開発を 企ててきた。
米国は世界で最も危険な政権が、最も破壊的な兵器を使って、我々を脅かすのを許さない。
イラクは国際的な査察に合意しながら査察官を追い出した。何かを隠しているのだ。
これらの国々は「悪の枢軸」だ。世界平和を脅かしテロリストに武器を与える。無関心でいれば破滅的な結果を招く。
我々は同盟国と連携する一方、不意の攻撃に備えてミサイル防衛を構築する。すべての国は知るべきだ。米国は国家の安全のためには、あらゆる手段を講じるこ とを。我々は、危機が近づくのを座視はしない。テロとの戦いは順調に始まったが、立ち止まってはいけない。立ち止まれば、テロリストとテロ国家は野放しの ままになる。
最優先課題は常に国家の安全でなければならない。私の予算は三つの大きな米国の目標を支えている。この戦争に勝ち、本土を守り、景気を回復することだ。
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2.米、「テロ支援体制」に照準 一般教書演説で「悪の枢軸」前面に
2002.01.31 朝日東京朝刊 4頁 政治 (全771字)
【ワシントン30日=杉本宏】ブッシュ米大統領は一般教書演説で、対テロ戦が転換期を迎えていると強調し、「アフガニスタン後」の第2段階の青写真を示し た。イラクなど「テロを支援する体制」に次の照準を当てたことが最大の特徴といえる。いま大量破壊兵器の拡散という「悪」に対処しないと、とりかえしのつ かない事態を招くという切迫感をあらわにしている。
大統領は、アフガニスタンなどを舞台にした対テロ戦に勝利しつつあるとの見方を強調したものの、オサマ・ビンラディン氏について一回も言及しなかった。
従来の主要演説とは好対照で、本来の目的だったはずの同氏の「捕そくないしは殺害」を強調すると、せっかくの「戦勝ムード」に水を差すと恐れたためと見られる。
代わって、イラクとイラン、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)による大量破壊兵器の脅威を前面に押し出し、これら諸国を「悪の枢軸」と呼んで強い警告を発した。
背景には「時間は我々の味方ではない」との認識がある。「テロとの戦いで立ち止まれば、テロリストとテロ国家は野放しになる」という厳しい見解だ。その防止には、ミサイル防衛や軍事費増、同盟国との協力など「あらゆる手段を講じる」と強調した。
だが、大統領が問題視しているのは、こうした脅威を醸成する「体制」そのものだ。政権打倒まで抜本的解決はあり得ないという議会保守派や論客の意見と通じ る。最も厄介なのが湾岸戦争以来の「天敵」イラクだ。「内部からの政権変革は期待できない」(ラムズフェルド国防長官)とみている。イラクへの軍事攻撃の 是非をめぐる論争は、当分収まりそうにない。
ソマリアやフィリピンなどを挙げ、テロの「聖域」をなくす必要性も訴えたが、念頭にあるのは軍事や情報・取り締まりなどの「対症療法」にすぎない。貧困などテロの温床をなくす「抗体づくり」への言及はまったくなかった。
朝日新聞社
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3.ブッシュ米大統領、各国に同調要請 「悪の枢軸」3カ国に再び警告
2002.02.01 朝日東京夕刊 2頁 2総 (全393字)
【ワシントン31日=杉本宏】ブッシュ米大統領は31日、一般教書で大量破壊兵器の開発疑惑が持たれているイラク、イラン、朝鮮民主主義人民共和国(北朝 鮮)の3カ国を「悪の枢軸」と非難したことに関連して、「各国も我われの側につく必要がある」と述べ、大統領の立場を支持するよう訴えた。フロリダ、 ジョージア両州での演説で語った。
強気の「悪の枢軸」発言には、名指しされた3カ国が反発、韓国や欧州の同盟国からも懸念の声が出ている。
大統領は「対アフガニスタン戦が成功したからといって、本気ではないと思っている人たちが世界にはいるが、我われにためらいはない」と強調。3カ国の名指しを避けながらも大量破壊兵器を開発している国は「品行方正にすべきだ」と再び強く警告した。
そのうえで、こうしたテロ支援国は「米国だけでなく、簡単に他国も狙うことができる」と述べ、米政府の方針を支持するよう同盟国を含む各国に求めた。
朝日新聞社
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4.米の反テロ戦争 今後の展開は (産経新聞)
外交・情報・軍事総合力で包囲網
大量破壊兵器 入手阻止図る
【ワシントン1日=前田徹】ブッシュ大統領が一般教書で指摘した北朝鮮など“悪の枢軸国”に対する反テロ戦の戦略が、三十一日に相次いで行われたラムズフェルド国防長官やライス大統領補佐官(国家安全保障問題担当)の演説などから徐々に明らかになりつつある。外交、情報、軍事など総合的圧