日曜日, 4月 21st, 2002
時評:ジェニンの虐殺と聖誕教会ーーアメリカーイスラエル超国家主義と祈りの空間 ■1.ジェニンの虐殺 ■2.歴史の逆説 ■3.歴史的教訓の欠如 ■4.アメリカーイスラエル超国家主義批判 ■5.大日本帝国とアメリカ世界帝国の自称「自衛戦争」 ■6.アメリカの国際機関クーデターとベネズエラ・クーデター失敗 ■7.聖誕教会包囲の象徴するものーー戦争と愛 ■1.ジェニンの虐殺 パウエル国務長官の調停が事実上失敗に終わりました。イスラエルはパウエル国務長官との約束によってジェニン、ラマラやナブルスなどから撤退を行っている ものの、これはアメリカを懐柔するためで、その一方ではガザ地区の南部の難民キャンプなどへ侵攻しており、ラマラの議長府やベツレヘムの生誕教会の包囲も 続けています。アメリカは事実上、これらを容認しています(資料23)。 ジェニンでは、約200(当初のイスラエル側主張)-数百人 (パレスチナ側主張)のパレスチナ人が殺戮されたという悲惨な事件が起こりました(17日の公共哲学フォーラム112及び資料1参照)。イスラエル軍は、 この凄惨な事件を隠すために死体をすぐに埋葬し、現在は数十人の死者に過ぎないと主張しているようです。1982年のベイルートの虐殺(死者約1000 人)を想起させる、虐殺行為の再現です。 中島勇氏によると、この激しい市街戦により、パレスチナ武装集団が「ジェニンの戦い」を手本にして「準国家」的な防衛組織の変化し、衝突が「国家間戦争」に転化してしまう危険があるということです(資料2の最後)。 こうなると、本当の「パレスチナ戦争」そのものとなります。イスラエル側は、軍の犠牲を避けるために、戦車だけではなく、ーー既に今回も使った(9 日)ーー戦闘機を本格的に用いて攻撃するかもしれません。この結果は、自治区において「虐殺」が繰り返されることになるでしょう。3日の緊急時評で書いた ように、自治区完全再占領やパレスチナ人の追い出し・排除などへと将来進むことも、考えられるでしょう。 このような事態が放置されると、本当の中東戦争に転化する危険が危惧されます。そのような危険について、軍事的に分析した文章として、資料9をご覧下さい。 幸い、パレスチナ側の訴えるジェニンの虐殺について、イギリスなどでも戦争犯罪であるという国際的な非難が高まり(資料8)、国連安保理はジェニンに現地 調査団を派遣する決議を採択しました(19日)。アメリカのバーンズ米国務次官補(中東担当)ですら、ジェニン難民キャンプを視察して、「むごすぎる悲劇 だ。パレスチナの数千の民間人が甚大な苦しみを被ったことは明らか」と述べ、イスラエル軍の作戦を暗に批判しました(20日)。ワシントンでも、大規模デ モが行われました(21日、資料12)。 このような追及や批判を徹底的に進めることが、イスラエルを制約することになり、以上のような悪夢の事態を防ぐことにつながるでしょう。イスラエルの完全撤退と議長の解放が実現することを期待したいと思います。 ■2.歴史の逆説 振り返って考えてみると、歴史の逆説がここには存在します。20世紀の歴史において、最大の虐殺は、ナチス・ドイツのユダヤ人殺戮(ホロコースト)であ り、その目的はいわば「民族浄化」でした。それ故に、戦後ドイツはーー「南京大虐殺」などを引き起こした日本と共にーー厳しく糾弾され、そのような悲惨な 事件が二度と起こらないように、多くの人々が最大限の努力を傾注してきたのでした。 戦後の社会科学における最大の目的も、このような悪夢が再現 することのないようにすることだったと言っても過言ではないでしょう。他の様々な論点については、多様な意見が存在しているにもかかわらず、この1点にお いては、殆ど全ての社会科学者や多くの良識ある市民が一致していたと言ってよいでしょう。これは、戦後の社会科学における最大公約数に他なりませんでし た。 旧ユーゴなどにおいても、非人道的な殺戮行為が起きたとされたが故に、「人道的介入」の妥当性が主張されたのでした。この場合は、 その主張の正当性について多くの議論があったのですが、今回のパレスチナ大侵攻においては、殺戮行為の存在は、英米系メディアによってすら明確に報道され ており、疑う余地がないように思えます。 責任者たるイスラエル側の主張を除けば、非人道的な虐殺の発生を疑う声は殆どありません。驚い たことに、フライシャー報道官は、イスラエル・ロビーの圧力を受けたらしく、パレスチナ寄りの調停と見られることを恐れて、シャロン首相を「平和の人」と 呼びました(!)(資料3)。正気の表現とは思えません。 ここにおける最大の歴史的逆説は、かつてナチス・ドイツに虐殺されたユダヤ人 の作った国家・イスラエルが、今度はパレスチナ人に対して、文明国としては最大規模の虐殺行為を行っているということです。かつて同胞が虐殺されたからと 言って、それとは無関係な他者・弱者を殺戮して良いはずはありません。私には、イスラエルの繰り返す殺戮行為は、未来の世界において、かつてのナチスや軍 国主義・日本のように厳しく指弾されるようにーーそして指弾されるべきなようにーー思えます。 ■3.歴史的教訓の欠如 戦後ドイツや日本は、他国から批判されただけではなく、内部の民主派によって、自国の過去を自己批判して、超国家主義やファシズムといった誤りを繰り返す ことのないように努力を積み重ねてきました。日本の場合、その成果は決して十分とは言えず、再び頭をもたげてきた国家主義に対して、警戒しなければなりま せん。しかし、ここには、ともかくも歴史の教訓が存在します。 これに対して、反「テロ」世界戦争において恐ろしいことは、アメリカやイ スラエルにおいては、そのような「歴史の教訓」が存在していないということです。イスラエルは戦後に建国されたわけですから、当然第2次世界大戦の教訓は ありませんし、むしろナチズムによる被害者という自己正当化があるのみでしょう。4回にわたる中東戦争は、軍事力の行使に反対する歴史的教訓よりは、むし ろ軍事力行使の必要性という「歴史的教訓」をもたらしているようにすら思えます。 他方、アメリカはベトナム戦争以外にはほとんど敗北し たことがない国ですし、湾岸戦争の勝利によってベトナム戦争の教訓は忘れられてしまったようです。現在のアメリカにおける異様な愛国心・ナショナリズムの 高揚は、国内における反戦の言論の自由を封殺していますから、もはや「健全なナショナリズム」ではありえません。 [...]
Read More..>>
Posted in 主張・意見・コメント(opinions), 平和問題 | No Comments »
水曜日, 4月 3rd, 2002
1.核使用策定計画の衝撃ーー戦争で核兵器が行使される世界 2.反「テロ」世界戦争への拡大ーーイラク戦線開始 3.イラク攻撃の外交的準備ーー不名誉な日米枢軸 4.イラク攻撃のための停戦ーー便宜的なパレスチナ和平圧力 5.核行使の誘惑ーー不審なアナコンダ作戦の「教訓」 6.アメリカ帝国の夷狄討伐世界戦争ーー死線の完全突破 7.世界戦争への拡大と長期化ーー次期大統領選への戦争選挙戦術 8.イラク戦の最悪シナリオーー核戦争と中東戦争 9.被爆国家・日本の世界史的使命ーー絶対的反核の貫徹 10.戦後日本公共哲学の絶対的当為ーーー絶対的公共悪に対する和戦 . .続報(3月29日追加) ■1.核使用策定計画の衝撃ーー戦争で核兵器が行使される世界 既にご存じだと思いますが、9日付ロサンゼルス・タイムズは、アメリカが7カ国に対して非常時の核使用計画策定と、より小型の核兵器開発を指示していたこ とを報じ、さらに10日付ニューヨーク・タイムズは生物化学兵器貯施設を標的にした核攻撃シナリオの策定指示を報じました。核兵器使用の対象に挙げられて いるのは、ロシアをはじめ中国、北朝鮮、イラク、イラン、リビア、シリアで、「悪の枢軸」3国だけでなく、中国やロシアまでも対象に入っています。文書で は、核の使用が想定されるケースとして、(1)通常兵器では撃破できない敵(2)核や生物・化学兵器による攻撃への報復(3)予想を超える軍事上の展開、 の三種類が明記されていると報じられています。 日本の新聞が本格的に報じたのは10日で、私は会議のため山口でこの記事に接して、非常 に大きな衝撃を受けました。中国新聞では10日の一面トップで大きく扱っており、全国紙よりも本格的に報道していました(資料3)。おそらく、これは中国 新聞が広島県もカバーしているためだと思われ、参考資料に見ることができるように、中国新聞の報道はこの件に関しては全国紙よりも充実しています。 アメリカ当局者は核使用計画策定の方は政治的考慮から否定していますが、民間研究所グローバル・セキュリティーが核兵器開発指示の文書の抜粋をHPで公表 しましたし(資料13)、ラムズフェルド国防長官は情報漏洩を怒り(資料10)、ボルトン国務次官(安全保障担当)が事実上認める発言をしておりブッシュ 政権の核攻撃の可能性を認めている(資料11、18)ので、報道が真実であることは確実です。参考までに、資料14にそのHPに掲載されている機密文書 Nuclear Posture Review[Excerpts]を付します。 既に2月22日の段階でボルトン国務次官)が「核不拡散条約に加盟している非核保有国 には核攻撃をしない」というカーター政権以来の方針を変更する姿勢を見せていました(資料1)から、これが政権レベルで決定されたと見て良いでしょう。こ れは、核不拡散防止条約体制をますます揺るがせるものです。そして、大統領自身が、イラク・北朝鮮などに対して、大量破壊兵器開発に対して先制核攻撃も辞 さないという言明をしました(資料9)。また、前述の秘密文書では、 「一、米国が備えなければならない「直近」「潜在的」「予測不能事態」の三形態の対応計画を想定。核攻撃能力の設定に際しそれらに応じられる戦力を用意。 一、「直近の対応計画」は朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)による対韓国、イラクの対イスラエル攻撃や台湾をめぐる武力衝突など。 … 一、北朝鮮、イラク、イラン、シリア、リビアは三形態のいずれかに属するが、北朝鮮とイラクは特に恒常的な軍事的懸念となっている。いずれもテロを支援、保護し大量破壊兵器とミサイル開発が活発。」(資料12) とされており、特に北朝鮮の韓国攻撃、イラクのイスラエル攻撃、中国の台湾攻撃は、核使用を備えるべき「直近」の事例として具体的に挙げられています。 冷戦時代には、核兵器は抑止力とされており、万一使用されたら人類滅亡の危険を孕むものの、使用することのできない兵器と見做されていました。然るに、この核使用策定計画においては、むしろ具体的な危機において使用することが想定されています。 しかも、テロ支援や大量兵器開発が上記文書では挙げられていますから、政権は、現在の反「テロ」世界戦争において核兵器を使用する可能性を本気で考慮していると考えなければなりません。広島・長崎を始め、世界各地で批判が始まったのも当然です。 核の時計の針が動かされたのも当然です。広島・長崎以来の核兵器使用の危険が、高まっていると言わざるを得ません。これを知って、衝撃を受けないでいられ ましょうか? 核不拡散体制が危機に瀕するのみならず、アメリカは戦争で本当に核兵器が行使される世界へと舵を切ろうとしているのです。これは、黙示録的 世界に他ならないでしょう。 ■2.反「テロ」世界戦争への拡大ーーイラク戦線開始 パキスタンでは、ウォール・ストリー ト・ジャーナルのダニエル・パール記者の誘拐・殺害事件(1月)に続き、昨日もイスラマバードのキリスト教会で手投げ弾テロがあり、アメリカ外交官家族を はじめ5人死亡、40人が負傷しました(17日)。今後も、様々なテロが続発することが懸念されます。 これに対して、アメリカは既に反 「テロ」世界戦争を、第2戦線以下へと展開させています。アフガニスタン戦争も継続していますが(アナコンダ作戦)、フィリピンを皮切りに、グルジア、イ エメンにも米軍が派遣されつつあり、さらにはコロンビアやスーダン・ソマリアなどへも派遣が検討されているようです。いよいよ戦線は世界中に広がり、ーー 世界大戦でこそないもののーー「世界戦争」の実質を備えてきたと言って良いでしょう(資料16)。 この焦点が対イラク戦争であること は、言う迄もありません。アメリカは、イラク攻撃には既に法的根拠がある(個別的・集団的自衛権を定めた国連憲章51条、停戦決議(安保理決議687)違 反)と主張しており(資料17)、フセイン政権打倒の意思を固めていることは確実です。 実は、同時多発テロとイラクの関係はさほど強く ないわけですが、アメリカ内部では、ーー同時多発テロとは別にーーフセイン政権が核武装する危険性が高いことを論拠として、それ以前に打倒すべきであると 論じられています。この点については、タカ派とハト派の間に大きな差はなく、その論争は主として時期(タカ派ー即刻、ハト派ー時期尚早)と方法に関しての ものとなっているようです(1)。前回述べたように、反「テロ」の論理から反「大量破壊兵器」の論理へと転換しているのは、主としてこのためでしょう。イ [...]
Read More..>>
Posted in 主張・意見・コメント(opinions), 平和問題 | No Comments »