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戦争宣言予告編:悪夢のシナリオ 小林正弥(千葉大学)

金曜日, 11月 15th, 2002

1.戦争宣言予告編:悪夢のシナリオ 昨日(8日)、対イラク国連安保理決議が採択されました。これで、米議会武力行使容認決議、ブッシュ政権中間選挙勝利(5日)というように、議会・世論・国際社会という「3種の神器」(朝日、朝刊)が揃い、イラク戦の準備態勢が整いました。とりあえず、イラクは決議を受諾するでしょうが、査察の過程で問題が生じ、アメリカは開戦へと向かうことが予想できます。ブッシュ大統領は、イラクが無条件受諾をしない場合は「最も厳しい結果」を招くと警告しましたが、これは「戦争宣言」の予告のようなものでしょう。 このMLでも、早い時期にはイラク戦に至る危険を警告していましたが、最近は誰の眼にも明確な事実になっているので、敢えて書く気が起こりませんでした。それでも、今日書く気になったのは、さらに危険な兆候が、他に同時並行的に現れているからです。 バリ島・イエメン・フィリピンなどのテロやロシアのチェチェン・テロは、テロが世界的に拡大したことを示しています。アル・カーイダなどが関与を認め、その背後にビン・ラーディンの計画が存在することがインターポールから示唆されています(資料1,2)。これは、世界の「パレスチナ」化、戦争の「世界戦争」化と言うことができるでしょう。 さらに私が戦慄したのは、イスラエルで労働党が政権から離脱し、右派政権がさらに右傾化することが確実になったことです。タカ派のモファズ元参謀長官が新国防相に、またネタニヤフ氏が外相に就任し、1月の総選挙に向けて、外相とシャロン首相との角逐が始まりました(資料4,9)。いずれが党首選で勝つにしても、総選挙でリクードが勝利することは避けられそうもありません。その上に、ネタニヤフが首相になれば、アラファト追放などの強硬策を加速するでしょう。シャロン氏が勝ったとしても、ネタニヤフとの対抗上、さらに右傾することは間違いないでしょう。もはや、閣内の労働党の牽制が存在しなくなるのですから。 さて、イラクが査察を受け入れてから、トラブルが生じてアメリカが開戦を行うまでに若干の時間がかかるでしょう。年内のクリスマス前に始まるという観測が強くなっていますが、新年になってから、1月か2月以降になるかもしれません。今回の決議では、7日以内にイラクが決議受諾を表明し査察が行われるとすれば、約10日後(11月18日ごろ)に先遣隊、45日以内(12月23日まで)に本隊が査察開始、査察開始後60日以内に安保理に報告(来年2月21日まで)というスケジュールになっています。従って、本隊の査察が何らかの形で妨害されたということになれば、年内の開戦が行われる可能性がありますし、査察の報告の結果攻撃するのであれば、2月頃ということになりましょう。 もし2月になれば、その前にイスラエルではリクード超タカ派内閣が成立することになるでしょう。アメリカはイラク戦前後にこのような事態が生じることを避けたかったのですが、イスラエル内政上の事情でこのような時期に選挙が行われることになってしまいました(資料8)。イラク戦の最中には選挙を延期する可能性もあるようですし、選挙前にイラク戦が行われる可能性もありますが、暫定的選挙管理内閣自体が超タカ派内閣ですから、危険性に変わりありません。 もしイラク戦の開始が遅れた場合には、ブッシュ政権が中間選挙で勝利した直後に、国連安保理決議が出たように、新年の1月か2月には、イスラエルでリクード政権が勝利した後に、アメリカが開戦するという流れになる可能性があるような気がします。アメリカやイスラエルで選挙によって「民主的」に世論による信任を得て、イラク戦やアラファト追放へと展開させるわけです。これほど、一国民主主義の限界を明確に示す出来事はありません。後世からは、「衆愚政」と批判されることを信じて疑いません。 世界各地でテロが起こるだけではなく、アフガニスタン戦に加えてイラク戦が開始されれば、「反テロ」戦争は、間違いなく「反テロ」世界戦争へと展開したことになるでしょう。以前は反「テロ」世界戦争と書いていたのですが、最近「反テロ」世界戦争という表記に変更しました。なぜなら、イラク戦は、「大量破壊兵器開発」を口実としており、実は「テロ」ないし「反テロ」と論理的な関係はないからです。 リクード超タカ派政権はアラファトら自治政府に強硬策を取るだけではなく、イラク戦でも過激な反応を行うことが懸念されます。万一、アメリカの開戦後にイラクがスカッド・ミサイルなどをイスラエルに打ち込むと、本格的反撃を企てる危険を感じます。今回のイラク戦においては、湾岸戦争時のようなイスラエルの自制は全く期待できません。既に、イスラエルはアメリカと迎撃ミサイルの発射演習を行ったり、公開したりしています(資料10,11)。 勿論、アメリカの攻撃やイスラエルの反撃によって、莫大な人命の犠牲を出してフセイン政権は崩壊するでしょう。ここまでで悪夢のシナリオは十分すぎるほどですが、「反テロ」世界戦争はまだ終わらないだろうと憂慮します。 資料6,7にあるようなイスラエルの姿勢は、アメリカの外交政策とも関連します。シャロン首相らは、イラクが終われば、次なる標的として、イランを対象とすべきだと主張しています。これは、ブッシュ大統領の「悪の枢軸」発言と連動しています。現時点ではブッシュ大統領もイラクと北朝鮮とを区別する姿勢を示していますが、政権内部には北朝鮮武力攻撃を主張する超タカ派もいます。そこで、フセイン政権を打倒した後では、さらに「大量破壊兵器」を保持している北朝鮮が打倒の対象として浮上する可能性も存在するでしょう。 ブッシュ大統領は、2004年大統領選での再選へ意欲を露わにして、しかもタカ派のチェイニー副大統領を維持するという方針を明確に打ち出しました(資料3)。これは、現在のような戦争政策を、2004年までだけではなく、2004-2008年までも続けることを意味するでしょう。しかも、2008年の自らの後継者として、内心では(今回再選した)弟のフロリダ州ジェブ・ブッシュ知事を考えているようです。前回の大統領選における集計混乱で弟が兄の当選を助け、今回は兄が弟の再選を助けて、将来大統領職を引き継がせるようなことになれば、政治の私物化ないしネポティズムも甚だしいでしょう。父・兄・弟と続けば、正しくブッシュ王朝のアメリカ世界帝国(!)ということになりかねません。 このようなことが目論見通りに実現するとは決して思いませんが、この種の野望を実現するために、ブッシュ政権は、持続する限り、戦争を世界各地で続けようとするでしょう。経済などの内政に争点が移行した途端に、民主党へと支持が移行する可能性が高いからです。「民主主義の帝国」であるが故に、帝国創設を企てる大統領は、民衆の支持を持続させるために、継続的に危機を引き起こし「帝国」の確立を進めようとするでしょう。 他方、パキスタンやトルコの総選挙でイスラーム系ないし原理主義的な政党が伸長したのは、当然予測されることとは言え、やはり不気味です。トルコは、政教分離が進みEU加盟が問題になっているなど、イスラーム圏ではもっとも「近代化」ないし西洋化を進めていた国家なので(スカーフ禁止政令)、その意味でも逆行する動きは懸念の材料です(資料11,12)。まだ本格的な兆候は現れていませんが、イスラーム地域の穏健派政権が打倒されて原理主義的政権が成立する危険も看過できないと思います。もしこのようなことが生じると、本格的な「文明の衝突」と「文明間世界戦争」へと事態が昂進する危険が現れます。 2.新しい平和運動のために――最悪シナリオを避けるために 現在、印刷に回す直前の平和論(ちくま新書)の草稿では、資料13のような最悪シナリオを書きました。これは、あくまでも「最悪シナリオ」なので、現実化する可能性は高いわけではありません。むしろ、これは危険性を提示して戦争に反対する反戦の論理なので、仮にイラク戦を強行してもここまで事態が悪化する可能性は低いでしょう。そこで、枚数の関係もあって、短縮ないし削除することを考えています。しかし、以上のような情勢を考えると、少なくともイラク戦やイスラエルの反撃までの危険は相当高く、悪夢のシナリオを荒唐無稽と片づけられないところが悩ましい点です。「最悪」ならずとも、「次悪シナリオ」ぐらいは実現してしまうかもしれません。 中間選挙における共和党の勝利は予想通りであり、2004年まで現在の戦争政策が続くことは覚悟せざるを得ません。そこで、私は2004年大統領選挙でブッシュ大統領が敗北することに希望を託しています。この場合は、戦争政策が中止されて、「最悪シナリオ」までは行かず、「次悪シナリオ」ぐらいで止まるかもしれないからです。それによってブッシュ王朝の世界帝国確立の野望が阻止され、イスラームとの対立も徐々に緩和に向かうことを念願します。 アメリカ国内で漸く大規模な反戦デモが行われたことが伝えられています(資料14)。民主党からも、カーター元大統領などのイラク戦への批判など、徐々に反戦の議論が提起され始めています。ここに未来の希望があります。アメリカの良い意味での共和主義的伝統が甦り、ベトナム反戦時のように政府を追い込んで、2004年に政権交代を実現させることを祈りたいと思います。 勿論、日本でもこのようなアメリカ国内の動きに海外から声援を送り、反戦運動を行って、このような批判を加速させるべきでしょう。私達も、イラク戦に際して、いかなる実践的発言を行うことができるのか、真剣に議論すべき時だろうと思います。ご意見などがあれば、お寄せください。 まずは、アフガニスタン戦の場合と同様に、HPなどで意見や見解の表明をすることが考えられます。 そして昨年の年末には、地球的平和問題会議を開催しました。現在はその刊行のために努力しています。そこで、イラク戦に際しても同様の会議を開催することが考えられます。 また、地球的平和問題会議の際にも、声明や署名などを行うという案もありました。結局、それは見送りましたが、これも検討の対象となるでしょう。また、他のグループで行っているこの種の活動を積極的に紹介したり、協力したりすることも考えられます。 私自身は、このような事態になっても、さほど平和運動が盛り上がらない事態を考えると、平和論や平和運動そのものに対しても問題提起する必要性を感じています。ちくま新書では、そのような議論を思想的に提起しています。 勿論、議論だけでは不十分で、実践的な展開が重要でしょう。とりあえず、鎌田氏らの平和運動「足の裏で憲法第9条を考える会」では、それを実践的に発展させようという動きが現れているので、私はそれに個人的に協力しています。前回の会の後に先方のMLに送ったメイルを資料15に付しておきます。「楽しい平和運動」を求める若者の希望が強いので、それに合わせて意見を述べたものです。これだけでは何のことかわからないでしょうが、ご参考までに。 ●資料1: http://news.msn.co.jp/articles/snews.asp?w=269510 ビンラディン氏は生存し世界中でテロを計画中=インターポールのトップが語る 2002 年 11月 9日 ●資料2: http://news.msn.co.jp/articles/snews.asp?w=268359 バリ島テロでアル・カーイダ犯行声明…CNN報道 2002 年 11月 8日 ●資料3: http://news.msn.co.jp/articles/snews.asp?w=268388 2004年の再選に狙い定めるブッシュ米大統領 2002 年 11月 8日 ——————————————————————————– ●資料4: イスラエルで早くも新外相と首相の対立高まる=両者とも党首選に照準 2002 年 11月 8日 ——————————————————————————– 資料5: [...]

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